海外FXではほとんどの取引業者が「追証ゼロシステム」を採用しております。
これは簡単に言いますと、「取引における損失は口座資金までしか発生させない」といったもので、いかなる荒い相場状況であっても、その損失は取引画面で見ることができる口座金額の範囲内までとなります。
このことは一見当たり前のようにも思えますが、国内FXではこういったサービスは行われておらず、いざという場面においては海外FXのこのシステムが非常に頼もしい存在となってきます。
そこで本稿ではこの海外FXでおなじみの追証ゼロ(追証なし)の仕組みや、追証ゼロシステムのお世話にならないようにするための安全なトレード方法などについて解説していきます。
「追証ゼロ」とは?

追証とは?
まず「追証」(おいしょう)について解説してみますが、相場が急激に変動した際、ポジションの含み損が短時間のうちに口座資金を超える額となってしまう場合があります。
そして口座資金以上の損失については、当然口座には存在してなかった部分ですので、その足りない金額部分をFX会社が顧客に請求することを「追証」(追証請求)と言います。
FX相場は、リーマンショックやギリシャ危機、チャイナショックなど本当に何でも起こり得る世界ですので、口座が時には上記のような事態に陥ってしまうことがあるのです。
また追証はFXだけでなく信用取引や商品先物など、相場の波が荒い金融市場で起こりやすい事柄となっています。
追証ゼロとは?
簡単な例をあげてみますと、口座資金が10万円ある中で新規ポジションを建てた後に暴落が発生。そしてその暴落があまりにも速いスピードでレートを下げたため、ロスカットも間に合わず一時的にそのポジションの含み損がマイナス13万円になったとします。
その後、ポジション自体はマイナス13万円で強制的に決済されたとしても、追証ゼロシステムにより実際の結果は入金額である10万円の損失で済むといったかたちとなります。
ほとんどの海外FX業者が追証ゼロシステムを採用しておりますが、逆に国内FXで追証ゼロを実施している会社は存在しません。
それは、日本では「金融商品取引法」によってFX業者は顧客の損失を受け入れることができないと定められており、顧客の損失は顧客本人がその責を負うこととなっているからなのです。
ただ海外FXは「追証なし」とはいいましても、実際には取引業者が注文処理をしている段階において本当の損失が発生しています。
追証請求となった国内の事例

国内FXにおいてはFX会社が追証なしといった措置を行うことができませんので、これまでにおける相場急変時には、トレーダーが実際に追証請求されることとなったケースがいくつもありました。
下の画像(ロスカット等未収金発生口座数)は、平成30年に国内で追証請求となった実績を表すものです。

出典:一般社団法人 金融先物取引業協会
基本的に追証請求となりやすいのは、大きな事件やニュース等が突発的に発生した場合がほとんどとなりますので、上記におきましても月ごとでその発生件数に偏りが見られます。
ではその中で具体的な追証請求へと繋がった出来事を取り上げてみます。
トルコリラショック
直近の暴落事件としては2018年8月の「トルコリラの暴落」が挙げられます。
トルコリラは高金利通貨として投資家の間では人気の通貨で、スワップ金利獲得を狙ったポジションの長期保有が主なトレードスタイルとなっています。
暴落となった原因は色々考えられる中、ユーロ圏でトルコリラ系金融商品のリスクが高まったことや、スワップ狙いの投資法に向けられた投機筋の仕掛け売りなどがあります。
この暴落により短時間に多くの注文が飛び交うこととなり、FX業者が顧客からの注文を処理するシステムもその処理が追いつかずロスカットを作動させる前にレートはどんどん下落し、ついには口座残高を超えた負債が一部の口座で発生することとなりました。
トルコリラ暴落による追証請求は上記画像(H30/8)を見ますと、件数は1,287件、口座残高を超えた部分の金額の合計がおよそ4,400万円。
これは、これまでに起こった様々な暴落等の出来事の中では比較的その件数や金額規模が小さい方に入ります。
より被害が大きい事例
2011年3月に発生した東日本大震災によるFX相場の混乱においてですが、こちらでもその暴落により多くの未収金が発生し、件数としては約1万2千件、未収金額は約17億円となりました。
また追証請求で最も有名な事例としては2015年に発生した「スイスフランショック」で、20分程度でスイスフラン/円が約40円も上昇するなど相場変動の瞬発的な激しさはリーマンショックを上回るものとなりました。
こちらの発生件数は約1,100件でトルコリラショックとほぼ変わらないものの、未集金額の方は約19億円にまで膨れ上がりました!
実はスイスフランショックは、取引業者にも大きな被害が出た事件で、一部の取引業者は自分たちでもポジションを保有してますので必然的に事件に巻き込まれた形となり、その一部は倒産にまで追い込まれたものとなりました。
追証ゼロの威力
このように記録的な暴落等が発生しますと損失はその際限を見ないこともあり、相場混乱の最中ではロスカットも不発気味となって甚大な損失を引き起こすこととなります。
海外FXで提供されている追証ゼロシステムは、こういった手におえないような額の損失を発生させない大切なセーフティーネットです。
現在ほとんどの海外業者ではこの追証なしが当たり前となっており、国内FXには無い大きな魅力の1つとなっております。
追証ゼロシステムの恩恵を受けやすいパターン

「追証なし」のお世話にならない方が本当は安心なわけですが、ここでは海外FXで追証ゼロシステムの威力が発揮されやすいケースについて説明してみます。
月曜の市場オープン直後
ご存じの方もおられるかもしれませんが、月曜日の朝は土日に起きた出来事の影響でレートが極端に動いた状態からスタートするケースがあります。
この時、未決済ポジションを保有していなければ問題とはなりませんが、前週からのポジションの持越しがありますと、「値飛び」によって損益の大幅な変動が起こっている可能性があります。
市場開始までに出来ることも限られてくるため、手を出せるひまもなくポジションの運命を賭けてしまうこととなります。
海外FXにおいては追証なしの措置により損失は限定的となりますが、前営業日までにポジションを決済していれば避けることができるものです。
経済指標の発表時(ちょっと奥深い注意点あり)
急なレート変動が予想される代表的な要因の1つです。口座資金がゼロになるほどの値動きとはならない場合も多くあります。
ただし、証拠金維持率がマージンコール~ロスカットレベル付近の時は、突然来る大波によりロスカットが追いつかず追証なしが適用されるといったケースが考えられてきます。
また経済指標は予めその発表日時が公となっている性質のものであり、もし損失となるような値動きとなったとしても、相場の偶然性や突発的なトラブルといった認識が海外FX業者にされにくい傾向があります。
従って、実際には口座残金がマイナスとなるような大きな損失額が計算された時であっても、海外FX業者から「恣意的な取引」と見なされない場合には、海外業者でも「追証」を実施する場合がありますので十分注意が必要です。
口座資金が少ない
海外FXは少ない資金で大きなレバレッジをきかせた豪快なトレードが可能となっております。
この口座資金の少なさは、もしレートが反対方向に動いた時、少ない値動きであっても口座全体に占める損失(含み損)の割合が大きくなってしまうものとなります。
そしてこのような事は短時間で引き起こされる可能性も十分あり、ロスカット発動を通過して口座資金ゼロ(追証もゼロ)に至るケースも少なくありません。
できれば確定損は避けたいものですが、口座資金が少ないことはメリット・デメリットが刻々と入れ替わる性質でもありますので慎重なエントリーを心がけることが大切です。
国内と海外のFX口座を相互に利用している
国内外のFX口座を開設している場合、ロスカットレベルやその他取引ルールの違いを混同したり勘違いしてしまうような時にトレードのミスが起こり、最悪の場合追証ゼロサービスの対象となってしまう可能性があります。
たとえば国内FXを裁量で取引している方で、使っている口座のロスカットレベルが証拠金維持率100%であるとします。
そして仕事の都合でポジションを放置気味にしていても、維持率100%到達でロスカット・損切りができるといった納得の仕方をしている場合、それ以上の損失が頭の中にありません。
ところがある時に海外FX口座でポジションを建て、ついいつもの感覚でポジションを放置してしまいますと思いも寄らない結果となる場合があります。
海外FXはロスカットレベルが一般的に低くなかなかロスカットされない事もあるため、いつもの国内口座であれば1万円程度の損切りだったところが、マイナス数万円になっても未決済のままといった事にもなってきます。
またロスカットレベルが低ければ低いほど、口座資金の全損に近づくようにもなるため、めったにない相場の急変時に一旦ロスカットがスルーされてしまうと、全損が目前のこととなり追証ゼロが適用されやすくなってきます。
またシステムトレードを行っている方の場合は各種設定変更をよく注意して行う必要があります。
追証ゼロシステムが適用されないようにするには?

無理のないFX取引が大切
基本的にはFXのトレード経験が豊かで普段から安全な取引を心がけていたり、余裕のある資金管理状況となっていれば追証ゼロシステムに頼るようなことはまずありません。
追証なしは、最悪の事態が発生した場合にのみその働きが生きてくるものですので、やはり普段は分相応のトレードに専念することが肝心です。
「追証なしサービスを受けないようにするための対策法」(例)
- 適切な損切り
- 高い証拠金維持率に努める
- 口座資金額やトレードスキル、相場状況に最適なポジションサイズ
- ルールに沿った安全なトレード
- 週を越えたポジション持越しはしない
ハイレバレッジはスキャルピングが基本
デイトレードやスイングトレードといった比較的長期間に渡るトレードの場合は、低レバレッジでポジションを建てるのが一般的です。
以上により、海外FXではスキャルピング取引に集中し、損切りやストップロスを忘れずに実行していれば自ずと追証そのものから無縁となっていくものです。
追証請求されてしまうかもしれないケース
追証ゼロが一般的な海外FXでありましても、実は追証請求されてしまうケースがあります。
例えばBigbossという取引業者の場合は、FX以外の商品として仮想通貨の取引を行うことができますが、この仮想通貨取引においては追証なしとはならないと規定しております。
またBigbossが規定する不正な取引に該当したトレードを行った場合にも追証なしとはならない(請求が発生)と定めております。

出典:Bigboss
「不正な取引」については、先ほどもお話ししました経済指標発表時における任意性の薄い(狙いがありそうな)エントリーや、大損害が見込まれる状況においてあえてポジションを建てることなどがあります。
こういった取引は、損失発生の可能性が高いことと、発生した時の損失額が大きいことが事前に予想されてきます。
従って、上記の旨を特別に謳ってない取引業者におきましても同じ状況となる可能性が高いですので、十分注意する必要があります。
まとめ

海外FXにおける「追証ゼロシステム」(追証なし)は、通常であればそれほど気に留まるものではありませんが、国内FXでは大損害となっていたケースにおいてその結果を大いに覆す働きがあります。
以下に追証ゼロについて整理しておきます。
- 追証ゼロシステムは多くの海外FX業者で提供されている
- 追証ゼロにより損失は最大で取引口座の資金がゼロとなるまでに限定される
- 相場の急変が起こりそうな時を避け追証ゼロの対象とならないようにすることが大切
- 普段から安全な取引に努めることも重要
- 大損失が予め予想できた時のポジションに対しては追証ゼロとはならない可能性がある
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